「ありがちな曲」は、むしろ良い
こんにちは。作曲の先生として活動する内山敦支です。前回から始まったこちらのニュースレター、早速たくさんの方にご登録いただき、嬉しく思うと同時に驚いております。
こちらのニュースレターでは、ポップス・ロックの作曲を対象として、作曲の技術面およびマインド面に関する解説、また作曲に役立つ情報などをマルチトピックのスタイルでバランスよく記事にしていきます。
「ありがちな曲になってしまう」という悩み
今回のニュースレターはちょっとマインド的なところから始めてみたいです。
作曲初心者のなかには、「出来上がる曲が『ありがちな曲』になってしまう」という点に悩んでいる方が多いです。そして「こんなありがちな曲しか作れない自分には作曲のセンスがないのではないか」と、その状況を悪く捉えてしまいやすいですが、その点について「それは違うよ」と、私は言いたいです。
■ ありがち=基本
私が10年以上作曲を教えてきた経験から言えるのは、その「ありがちな曲が作れる」という状態はむしろ好ましい、ということです。実際、ありがちな曲を作っていた人が作曲の経験を積むことで、個性的で聴きごたえのある曲を作れるようになっています。
では、なぜ「ありがちな曲が作れる」という状態が好ましいのかというと、それは「ありがちな曲が作れる」ということが、「一般的な音楽をしっかりイメージできている、そしてそれを作れる」という証拠だといえるからです。つまり、標準的な音楽がどのようなものかを自分の中でしっかりと把握できていて、それを自分なりにまとめ上げることができているということです。いわば、基本がしっかりと身についている状態です。
なにごとにおいてもそうであるように、作曲においても基本が大事です。あらゆる応用的な作曲は基本的な作曲の上に成り立っています。基本ができてこそ、その基本を崩したり、独自の切り口を加えて応用していくことができます。つまり、「ありがちな曲が作れる」ということは、「より聴きごたえのある曲を作れる素質がある」ということ、ともいえます。
■ 作曲を繰り返して応用を学ぶだけ
これまでたくさんの人を見てきた経験から言うと、作曲に興味を持って始めてみたものの何をどうすればいいかわからず、曲をまとめ上げることもできず、そのままフェードアウトしてしまう人は多いです。出来上がる曲も、ありがちな曲にさえなっていない、標準的な音楽からすると不自然な部分がたくさんあるようなケースが少なくないです。そんな中で、標準的な「ありがちな曲」を作れるということには、大きな価値があります。
先ほど述べたように、基本が身についているのであれば、あとは応用的な手法を学んだり、曲作りを何度も繰り返して感覚を磨いて、どうすればその曲が「ありがち」ではなくなるかという視点から磨き上げていくだけです。そんな姿勢で作曲を続けていけば、いつの間にか理想とするような、「ありがちではない曲(=個性的な曲、聴きごたえのある曲)」が作れるようになっていくはずです。
ありがちな曲が作れるというその技術に、まずは誇りを持ってください。そして、やりがいを感じながら、ぜひ作曲の経験をたくさん積んでいってほしいです。
定番のコード進行の有用性
今回のニュースレターでは、技術面のトピックとしてコード進行について少し基本的な考え方を書いてみます。